行政代執行の実施において、物理的なゴミの撤去と並んで極めて重要な法的事項が、その作業に要した費用の回収です。行政代執行法に基づき、代執行にかかった人件費、運搬費、廃棄物の処分費などの全額は、本来その義務を負っていた住人に対して請求されます。この費用請求の根拠は、原因者負担の原則にあります。住人が自ら行うべき片付けを、行政が肩代わりしたに過ぎないため、そのコストは住人が負担すべきであるという考え方です。代執行が完了すると、行政庁は費用の納付を命じる「納付命令」を出します。この命令は法的な強制力を持ち、住人が納付期限までに支払わない場合、行政は国税滞納処分の例に従って、住人の給与や不動産、預貯金などの資産を差し押さえる「強制徴収」を行うことができます。しかし、実務上の課題として、ゴミ屋敷の住人の多くが経済的に困窮しているという現実があります。生活保護受給者や年金生活者、あるいは多額の借金を抱えている場合、差し押さえるべき資産がなく、結果として徴収が不能になるケースも少なくありません。このような場合でも、法的な支払い義務が消滅するわけではありませんが、現実的には公費(税金)で賄われ、未収金として処理されることになります。自治体の中には、支払いの分割を認めたり、福祉的な相談を通じて自立支援と並行して回収を試みるなどの柔軟な対応を取ることもありますが、基本的には代執行の費用は住人が一生負い続ける債務となります。一部の条例では、費用の徴収が困難な場合に備えて、一定の条件のもとで費用を免除する規定を設けている例もありますが、それは極めて例外的な措置です。行政代執行は、住人にとっても財産を失うだけでなく、多額の負債を抱えるという極めて厳しい結末を招くものです。費用請求の手続きは、代執行という行政作用が、単なる「無料の片付けサービス」ではないことを示すための法的な決着であり、地域社会全体の公平性を担保するための不可欠なプロセスなのです。