私たちは日々、全国各地のゴミ屋敷と呼ばれる現場を清掃していますが、その現場数は年々増加の一途を辿っています。現場を回っていると、日本社会の「何人に一人」がゴミ屋敷の問題を抱えているのかという問いが、いかに現実味を帯びた深刻なものであるかを痛感せずにはいられません。かつてゴミ屋敷といえば、地域でも有名な特定の家を指すことが多かったのですが、現在はマンションやアパートの一室、あるいは見た目は普通の住宅でありながら中に入ると足の踏み場がないという現場が主流になっています。私たちの実感値としては、都市部においてはおよそ百世帯に一、二軒の割合で、何らかの住環境維持の困難に直面している家庭があるのではないかと感じています。清掃を依頼される方は、高齢者の家族だけでなく、三十代や四十代の働き盛りの方々も非常に多いのが特徴です。ゴミ屋敷化の原因は多様化しており、特にADHDなどの発達障害に起因する片付けの困難さや、ブラック企業での労働による精神的な疲弊、さらには離婚や死別といった喪失体験が引き金になるケースが目立ちます。ゴミ屋敷の住人に対する世間の目は厳しく、排除の対象になりがちですが、私たちが現場で出会う人々は、かつては立派な職業に就き、家族を愛していた普通の人々です。彼らはある日突然、人生のハンドルを操作できなくなり、ゴミという名の「心の防波堤」を築いてしまったのです。清掃を終えた後の住人の表情を見ると、彼らがゴミに執着していたのではなく、ゴミに閉じ込められていたのだということがよく分かります。日本の人口減少と高齢化が進む中で、この「何人に一人」という割合は今後さらに上昇することが予測されます。私たちは単にゴミを運ぶだけでなく、社会が取りこぼしてしまった人々の尊厳を拾い上げているのだという自負を持って作業に当たっています。ゴミ屋敷は特別な誰かの問題ではなく、明日の自分、あるいは隣に住む人の姿かもしれない。その危機感を社会全体で共有しなければ、この住環境の崩壊を止めることはできないでしょう。