特殊清掃の現場において、私たちは一日に数百枚、時には数千枚のゴミ袋を使用します。素人の方が行う片付けとプロの作業の決定的な違いは、ゴミ袋への「詰め方」とその「充填率」にあります。ゴミ屋敷の住人やそのご家族が自力で片付けようとする際、よく見受けられるのが、ゴミ袋の口を早々に縛ってしまう、あるいは逆に溢れるほど詰め込みすぎて口が閉じられなくなるという二極端な失敗です。効率的な片付けを行うためには、ゴミ袋の容量の八割程度までを目安に詰め込み、残りの二割を「結びしろ」として確保することが重要です。この余裕があることで、しっかりと二重結びができ、運搬中に中身が飛び出すリスクを最小限に抑えられます。また、ゴミ袋の中の「空気」をいかに抜くかもプロの技の見せ所です。特に衣類や布団などの布製品は、そのまま入れると空気を孕んで体積ばかりが大きくなってしまいます。袋に入れた後に上から膝でゆっくりと体重をかけ、空気を押し出しながら口を縛ることで、一袋に収まる量を劇的に増やすことができます。ゴミ屋敷では、運び出すべきゴミの総量が膨大であるため、一袋あたりの効率を十パーセント上げるだけで、最終的なゴミ袋の枚数とトラックの往復回数を大幅に削減できるのです。さらに、私たちはゴミ袋の色や形を「情報のタグ」として活用します。例えば、可燃ゴミは透明、不燃ゴミは半透明、そして住人にとって大切かもしれない「探索品」はあえて色付きの袋に入れるなど、一目で中身の性質が判るように管理します。これにより、膨大なゴミ袋の山の中から、後で必要になった物を探し出す手間を省くことができます。ゴミ屋敷の現場は常に時間との戦いです。一枚のゴミ袋をいかに速く、かつ確実に処理するか。その小さな動作の積み重ねが、数日間かかるはずの作業を数時間に短縮するのです。ゴミ袋は単なる容器ではなく、情報の整理と物流を支える戦略的なツールであるという認識を持つことが、ゴミ屋敷という難敵を攻略するための最短ルートとなります。
ゴミ屋敷清掃のプロが語るゴミ袋の充填率と効率化の技術